想いとお品

酒造りはモノづくりとは異なる面白さがあります。よくよく考えてみると誰がお酒を造っている のかわからなくなるのです。杜氏さんをはじめとする人々が麹や酵母という微生物とともに働く ことで発酵食品としてのお酒が出来上がっていくのです。
生物としての大きさはまったく異なるのですが、生物同士のコラボレーションでお酒が出来上が るのです。造るというよりも出来上がるという表現の方が適切のように思えるのです。 同じ日が二度とないようにお米の出来、その日の温度、湿度、外の風の具合は同じ酒蔵において も日々異なります。当然ながら全国の酒蔵それぞれも土地の持つ特性や、水、そこを吹き抜ける 風、すべてが異なります。

お酒を仕入れるとき、現地に足を運び、その土地を感じ、そこに生きる人や杜氏さんの 話を聴き、わたしたちが受け取ったものを皆さんにお届けしたいと思っています。

わたしたちが食べているものはすべて「いのち」です。お米であれ、小麦であれ彼らが太陽の光 を浴び、水を吸収しながら生命として育っていくのを待たなければ私たちは食することでは来ま せん。何かと何かを組み合わせれば食べ物が出来上がるといったことはないのです。 わたしたちは間違いなく「いのち」をいただいているのです。

いのちがいのちとしてその力を十分に発揮できる環境で育ったものを自分たちの五感で味わい、 その確かさを確認して皆さんにお届けするように心がけています。

今日はどんな気分ですか？どんな食事とともになさいますか？プレゼントですか？
直接的に質問をしなくてもお客様の佇まいからニーズを想像してアプローチをしていきます。
そのニーズは季節や体調によっても変化します。
少し疲れているように感じられたら元気の出るものを提案したくなります。
またその日が立春であれば富久錦の立春朝搾りをお勧めするかもしれません。

季節とお客様と酒蔵の組み合わせを見立てつつ、コミュニケーションを楽しんでいきます。